昨今、企業によるAI導入が進んでいます。一方で、組織の中でAIをどのように業務へ組み込み、成果につなげていくべきか、明確な答えを見いだせていない企業も少なくありません。そこで今回、「自社ビジネスを加速させるドライバーとしてAIをどう活用すべきか」をテーマに、2026年4月14日、都内にて、株式会社LayerX 執行役員 Ai Workforce 事業 CEOの中村 龍矢さんと、NotionでAIプロダクトマーケティングを担当するギャビー・ジャナトプールによる対談イベントを開催しました。
【Notion AIプロダクトマネージャー登壇】AIは「個人の生産性向上」から「組織の推進力」へ

最初に登壇したのはNotionのサンフランシスコ本社からやってきたギャビー・ジャナトプール(Gaby Janatpour)。これまでOpenAIやGoogleといった巨大テック企業でAIの変遷を見ており、現在はNotionのAIプロダクトマーケティングマネージャーとして活動しています。
今回、ギャビーは「AIを“個人の時短ツール”から“組織の推進力”にするためのアプローチ方法」をテーマに語りました。

ギャビーによると、企業のAI導入は成熟度に応じて、次の4段階でレベルアップしていくといいます。
レベル1:アイデアの探究や意思決定の支援をする「思考パートナー」としてAIを活用する(例:企画の壁打ち、検索補助)
レベル2:タスクをより迅速に完了し従業員の時間を創出する「アシスタント」としてのAI(例:資料のたたき台作成、翻訳、要約まとめ)
レベル3:反復作業を自動化しチームの効率を向上させる「チームメイト」としてのAI (例:会議後の議事録→タスク起票)
レベル4:重要なワークフローを実行し、組織の能力を拡大する「システム」としてのAI(例:経費精算で申請内容をチェックし、承認依頼 → 会計システム連携までを一連で実行する)
レベル1〜2は個人のワークフローを支援するためにAIを単体ツールとして活用する段階ですが、レベル3〜4は組織のワークフローを支えるためにAIがチームメイトとして使われる段階です。ここで重要なのは、レベル2からレベル3へ上がること。つまり、AIを使って組織全体にどうインパクトを出していくかを考える必要があります。
そのために3つのステップを歩む必要があります。
ステップ 1:コンテキストの集約
=組織のナレッジをすべて一か所に集める
ステップ 2:AIを業務フローの中に取り込んでいく
=AIを単体ツールとして使うのではなく、業務フローの中に入れる
ステップ 3:自動化する
=一定の判断や処理をAIエージェントに担わせる
このようなステップを踏んだ組織は、AIを「個人の生産性向上」から「組織の推進力」へと引き上げ、組織全体に多大な成果を与えることとなります。
【LayerX 執行役員 中村 龍矢さん登壇】事業インパクトを大きくする「組織AI」

続いてゲストスピーカーとして登壇したのは、LayerX 執行役員であり、エンタープライズ企業向けAIプラットフォーム「Ai Workforce」の事業CEOを務める中村 龍矢さんです。自社のAI戦略を取り組みながら、数々の企業のAI活用を見続けてきた中村さんから、AIを会社全体の成果につながる仕組みとして、どのようにスケールさせるかについて語っていただきました。
中村さんは、企業がAI活用を進める上で「個人AI」を脱却し、「組織AI」へ進んでいくことが大切だといいます。そう考えるに至った背景には、LayerX社内でAI利用を推進する中で、いくつかの課題が浮かび上がってきたことがありました。
社内でClaude CodeなどのAIサービスのアカウントを社員一人ひとりに配布し、AIによる個人の業務効率化を進めたところ、
コストが膨らむ:全員が個別に同じような調査やドキュメント生成をしてしまい、作業の重複が多くなってしまった。さらに必要以上に高性能モデルを使っていた。
ノウハウのシェアが進まない:個々人は優れたプロンプトやスキルを持つが、それが共有されない。結果として、組織資産にならない。
コンテキストが引き継がれない:AIとのやり取りが次の仕事に引き継がれていないため、毎回、ゼロからAIとやり取りすることになる。
といった課題が生まれ、「個人レベルでのAI活用による事業インパクトの創出」には限界があると感じたのです。

このような「個人AI」は組織がAI導入を進める上で必然的に踏むステップではありますが、AIの費用対効果を最大限に引き出すためには「組織AI」に進める必要があります。
具体的には、
点の自動化:単発タスクをAIで処理する(例:契約書レビュー、要約など)
線の自動化:一連の流れをつなげて自動化する(例:契約交渉の開始から締結までを一気通貫で支援する)
面の自動化:複数部門・複数業務を横断して自動化する(例:営業、法務、審査、契約、実行、管理までを全体でつなぐ)
というように3段階を踏んで、AIの組織導入を進めていきます。
そして組織AIを進めたことで、スキルの共有や業務データの連携といった組織連携が生まれ、AI活用による事業成果が生まれていきます。
中村さんが強調していたことは、AIによる単発タスクの効率化だけでは事業インパクトは小さいということです。そのためにも、業務の本質を炙り出した上で、チームや部署を横断したAIの業務自動化を作り出すことが大事だと明かしました。
【トークセッション】AIを組織全体の“労働力”として設計するために必要なことは?

最後のプログラムは、トークセッションです。
先ほど登壇したギャビー、LayerX 中村 龍矢さん、そしてNotion AIソリューションスペシャリストの早川 和輝の3人で、「AIを組織全体の“労働力”として設計するために必要なこと」についてディスカッションしていきます。
テーマ#1「AIを事業成長のドライバーにするためのアプローチ」
1つ目のテーマは「AIを事業成長のドライバーにするためのアプローチ」です。中村さんはそもそもAIはドライバーになることはないと自身の意見を述べました。その上で、「ビジネスモデルによって、ドライバーは商談数や成約率などになります。そしてAIはそのようなドライバーに貢献するために存在する」と語ります。つまり、ただAIを導入すればいいのではなく、売上や利益を生む“本体の仕組み”を良くするための手段としてAIを使用すべきと語りました。
テーマ#2「AIエージェントのワークフロー統合における課題」
中村さんは、AIエージェントを業務に組み込むには「自由に使うもの」と「デフォルトで動く(強制に近い)もの」を分け、後者を自律的に動かすには適切なイベントトリガー設計が重要だと指摘しました。さらに、必要なイベントは外部サービス側にあることが多く、その仕様やアクセス権への依存がエンタープライズでの難しさになると述べました。一方のギャビーは組織のワークフローの中にAIエージェントをうまく入れ込むために、手始めにワークフローを深く理解している従業員からAIエージェントを取り入れ、どの業務をどのレベルまでAIに任せられるかを検証してから本格展開するよう進言しました。
テーマ#3「AIファーストを支える組織・人材・文化」
最後のテーマは「AIファーストを支える組織・人材・文化」です。中村さんは「会社としてAIに投資し、戦略を語るリーダーは多いのですが、AIを業務の中に取り込んでいるリーダーは少ない。ChatGPTやNotion AIを使いますというレベルではなく、リーダー自身がAIエージェントを組んで、自分のワークフローに取り込んでいるマネジメント層はごくわずかです」と語り、リーダー自身がどれほどAIに深く触れているかが重要だと強調しました。一方のギャビーはNotion本社の例を取り「Notionでは共同創業者のサイモンは8つのAIエージェントを同時使用していて、自身のワークフローの中にAIを取り込んでいます」と話し、AI活用が現場だけでなくトップレベルで当たり前になっていることが、組織文化として大事なことだと語りました。
組織によるAI活用のあり方はどんどん変革している

イベントを通じて、登壇者から伝えられたメッセージの一つは、AI活用が「個人の作業効率化ツール」として使うフェーズを終え、組織全体の仕事の進め方を変える“労働力”として実装するフェーズに入っている、ということです。組織におけるAI活用がまだ確立されていないチームは、まずはNotionで組織AIを築いてみませんか。

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